吉祥寺食べある記

■「吉祥寺 ふじ本」の「煮はまぐり」で贅沢な旬の味を

知る人ぞ知る、吉祥寺の鮨の名店、「吉祥寺 ふじ本」さん。

この時季ならではの、おすすめの逸品を教えていただきました。

春に最も美味しい時期を迎える「蛤」。

「煮蛤」といえば、江戸前寿司を代表するネタ。蛤を甘めの煮詰めに漬け込んだものが一般的ですが、

こちらの「煮はまぐり」は少々異なる様子。

「吉祥寺 ふじ本」ならではの、ひと手間、そしてひと味違う「煮はまぐり」をご紹介します。

使用するのは、大粒の立派な蛤。

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注文が入ってから殻を剥き、身をはずします。

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続いて蛤に火を通すのですが、

ただお湯で茹でるのではなく、これまで継ぎ足し用いてきた蛤の茹で汁を使います。

蛤の出汁で、蛤を茹でる。旨味を逃がさないための、ふじ本さんならではのこだわりです。

 身は完全には浸さず、半分鍋から上がった状態。火は通しつつ身が固くなりすぎないよう、絶妙な頃合いを見計らうのは、まさに職人技。

ふっくらと上がった蛤。活きの良い蛤は、なんとこの状態ではまだ生きています。

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ニ枚におろします。

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鮮度を失わぬよう、やわらかな身を壊さぬように握る、

思わず見とれてしまう、ご主人の繊細な手仕事。

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仕上がったのは、色彩もどこか春らしい、美しい二貫の握り。

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一つはすだちやかぼす等の柑橘類を添えて。もう一つは上に煮つめを塗り、少量の山葵を。

まだわずかに生きているのか、いまにも動きださんばかりに身がよじれているのは、活きの良い証拠。

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これは鮮度を損ねぬうちにいただかなければと、写真を撮るのも早々に切り上げ、早速いただきます。

まずは蛤そのものを味わいたいので、こちらから。

きゅっとすだちを絞り、ほんのわずかにお醤油を。

口に入れた瞬間、柑橘の香りの中に磯の香りがふわりと。身はとてもやわらかで、所々にコリコリとした食感。

ああ、蛤ってこんなに美味しいんだ、と思いました。

柑橘の酸味が蛤の味を引き立てるのですね。ネタとシャリのバランスも考えられており、小ぶりながらも旨味がぎゅっと詰まった一貫。

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続いてもう一貫、煮つめの方をいただきます。

こちらが「煮はま」としてはオーソドックスな味付けですが、煮つめの程よい甘さが淡泊な蛤に良く合います。甘味と、つんと鼻に抜ける山葵の辛味のコントラストが楽しい。

素材の持ち味を活かす調理法、食材の組み合わせ。

美味しさを追求するための手間を惜しまない仕事。

職人の技とこだわりによって創られる「本物の美味さ」を、

こちらに来るといつも思い知らされます。

鮨だけでなく、一品料理も是非食したい品々ばかりが揃っています。

いま食べるべき逸品は、ここ「吉祥寺 ふじ本」にあり。

今回ご紹介した「煮はまぐり」は1,000円(税別)~ ※時期により変動します。

吉祥寺  ふじ本

武蔵野市吉祥寺南町4-4-12

0422-26-1509

営業時間  17:00~22:30(L.O.22:00)/ランチ(平日の月・木) 11:45~14:00(L.O.13:30)

定休日 水曜日