知る人ぞ知る、吉祥寺の鮨の名店、「吉祥寺 ふじ本」さん。
この時季ならではの、おすすめの逸品を教えていただきました。
春に最も美味しい時期を迎える「蛤」。
「煮蛤」といえば、江戸前寿司を代表するネタ。蛤を甘めの煮詰めに漬け込んだものが一般的ですが、
こちらの「煮はまぐり」は少々異なる様子。
「吉祥寺 ふじ本」ならではの、ひと手間、そしてひと味違う「煮はまぐり」をご紹介します。
使用するのは、大粒の立派な蛤。
注文が入ってから殻を剥き、身をはずします。
続いて蛤に火を通すのですが、
ただお湯で茹でるのではなく、これまで継ぎ足し用いてきた蛤の茹で汁を使います。
蛤の出汁で、蛤を茹でる。旨味を逃がさないための、ふじ本さんならではのこだわりです。
身は完全には浸さず、半分鍋から上がった状態。火は通しつつ身が固くなりすぎないよう、絶妙な頃合いを見計らうのは、まさに職人技。
ふっくらと上がった蛤。活きの良い蛤は、なんとこの状態ではまだ生きています。
ニ枚におろします。
鮮度を失わぬよう、やわらかな身を壊さぬように握る、
思わず見とれてしまう、ご主人の繊細な手仕事。
仕上がったのは、色彩もどこか春らしい、美しい二貫の握り。
一つはすだちやかぼす等の柑橘類を添えて。もう一つは上に煮つめを塗り、少量の山葵を。
まだわずかに生きているのか、いまにも動きださんばかりに身がよじれているのは、活きの良い証拠。
これは鮮度を損ねぬうちにいただかなければと、写真を撮るのも早々に切り上げ、早速いただきます。
まずは蛤そのものを味わいたいので、こちらから。
きゅっとすだちを絞り、ほんのわずかにお醤油を。
口に入れた瞬間、柑橘の香りの中に磯の香りがふわりと。身はとてもやわらかで、所々にコリコリとした食感。
ああ、蛤ってこんなに美味しいんだ、と思いました。
柑橘の酸味が蛤の味を引き立てるのですね。ネタとシャリのバランスも考えられており、小ぶりながらも旨味がぎゅっと詰まった一貫。
続いてもう一貫、煮つめの方をいただきます。
こちらが「煮はま」としてはオーソドックスな味付けですが、煮つめの程よい甘さが淡泊な蛤に良く合います。甘味と、つんと鼻に抜ける山葵の辛味のコントラストが楽しい。
素材の持ち味を活かす調理法、食材の組み合わせ。
美味しさを追求するための手間を惜しまない仕事。
職人の技とこだわりによって創られる「本物の美味さ」を、
こちらに来るといつも思い知らされます。
鮨だけでなく、一品料理も是非食したい品々ばかりが揃っています。
いま食べるべき逸品は、ここ「吉祥寺 ふじ本」にあり。
今回ご紹介した「煮はまぐり」は1,000円(税別)~ ※時期により変動します。
武蔵野市吉祥寺南町4-4-12
0422-26-1509
営業時間 17:00~22:30(L.O.22:00)/ランチ(平日の月・木) 11:45~14:00(L.O.13:30)
定休日 水曜日